死にゆくインターネット Category:エッセイ Date:2025年07月26日 楽太郎です。 今、個人サイトを3つ制作していますが、そのうち1つは完成しつつあります。 ただ、このサイトは「保管庫」あるいは「ポートフォリオ」みたいな形で使おうと考えており、実際にコンテンツで集客するには長い道のりがあると思います。 いくつか自作品の宣伝手段は考えていますが、多くの人が採用するような正攻法は採用しないつもりです。 SNSや投稿サイトなどを使えば良いのでしょうが、敢えて独自路線でやっていこうと思います。 私はこれからインターネットの世界は様変わりすると考えていて、つまり「崩壊」を予感しています。 「タダほど怖いものはない」という言葉がありますが、「タダ」であるからこそ立ち行かなくなっていくと考えていて、そう予想する以上は通常の手法を使わないつもりです。 今回は愚痴も含みますが、その話をします。 地上波のTVは、基本的に無料です。 無料だからこそ視聴率が軒並み20%台という時代があって、つまり人口で言えば2500万人ほどが同じ番組を見ていました。 今ではYouTube100万再生で「大バズり」という世の中ですから、メディアの規模が違います。 無料放送だからCMを挟みますが、国民の5分の1が見るCMが効果絶大でないはずはなく、費用対効果は絶大だったでしょう。 もちろんTVはつけたら時間の許す限りタダで流れるものだからこそ、国民にプロパガンダや価値観を意図的に植えつけるにはうってつけの政治装置でした。 ワイドショーやニュースで政権や政治を批判すれば、お茶の間の国民は「その通りだな」と思ったことでしょう。 同様に社会的な流行も雰囲気も、TVを中心としたマスコミが作り出す趨勢が猛威を振るう時代が続きました。 今やTVすら家に置かない家庭も増え、端末さえあればほぼ無料の「インターネット」に接続すれば、AppleやGoogleやAmazonのロゴは必ず目にすることになります。 多くの人々は、アメリカ合衆国の有数のホワイト企業がまさかコンプライアンスを自らかなぐり捨て、サービスをわざと改悪するなどあり得ないと考えるはずです。 こんな記事が、イギリスの経済誌「エコノミスト」に掲載されました。 AI is killing the web. 要約すると、生成AIコンテンツの増加により現在ネットの検索トラフィック数、つまり検索をかけてサイトを経由する数が15%減少しているそうです。 要するに、ChatGPTなどがWEBをクローリングしてサイト上の情報を拾ってアプリ内で再構成するため、実際に記事元のサイトを訪問する回数が激減しているのです。 WEBサイトの運営は主に、アフィリエイトや広告枠を出すことで資金を得ています。 しかし、ユーザーがサイトを訪問せずに欲しい情報が手に入れられたら、わざわざ検索してサイトを見に行く必要がありません。 コンテンツ提供者は、言い方は悪いですが内容は盗まれるけれど、対価も得られないどころかクローリングBOTをブロックする手段が限られており、しかも対策に自ら資金を投じなければなりません。 その上、訪問数が減ればアフィリエイト収入や広告費も減少し、サイト運営は難しくなります。 今のTVはハードディスクに録画して後で見る人が増えたので、CMはほぼスキップすると思います。 スポンサー側はCMを見てもらうために番組に資金を提供しているので、物理的にCMが見られなければスポンサーになる意味が殆どありません。 同様に、インターネットにおいてもWEB広告が消費者にアプローチできなければ、出稿する意味もあまりなくなります。 だいぶ前ですが、iPhoneのOSに「広告非表示機能」がつきました。 私たちはアプリを使うにしても、邪魔な広告を見ないようにするためにサブスクに入会するほど、広告を「悪者」のように見てしまう習慣がつきました。 確かにネット上の広告は大きすぎる上に多すぎるので、若干悪質性すら感じるようになって久しいです。 だからユーザーは、不快な広告を見ないためのサービスすら求めるようになってきました。 まるで広告が「人質」のようになったことで、広告を出稿する企業は大した費用対効果を生んでいないのではないでしょうか。 WEB広告を出すにはGoogleなどのアフィリエイトに登録すれば手早いですが、やはりGoogleに手数料を支払う必要があります。 しかし、サイトに広告を出してもAIが要約するからサイトへのトラフィックは減り、そもそもネットに広告を出せば邪魔者扱いされてまともに見てもらえません。 けれど、インターネットを広告塗れにして広告に対する相対価値を低下させたのも、AIBOTを走らせながら物理トラフィックを減少させているのもGoogleであり、広告主はそれでも同社にみかじめ料を支払ってWEB広告を出しているのです。 私はこの状況を俯瞰すると、「まんまとやられたな」と思います。 そもそもGoogleは2000年代初め、検索能力の精度が高くアプリとして軽快だったために、検索エンジンを備えたChromeはブラウザとして人気になりました。 当時のインターネットは「フリーミアム」の楽園だったので、有志が作った無料のアプリが豊富でした。 しかし時は経ち、かつてのベンチャーが今は業界の寡占企業となり、大企業となったが故に殆どのアプリが課金制になりました。 それらのテック企業がやっていくには、アプリの無料部分を制限して完全版に課金させるか、広告主からスポンサードを貰いながら「広告を悪者」にして非表示機能をプレミアムでつけるのがフォーマットになっています。 けれど、アプリ開発は一度完成してしまえば、追加機能を作らない限りはシステムの保守さえしていれば良くなるので、やることが限られてきます。 それゆえ、MicrosoftのWindowsでも GoogleのYouTubeもAppleのiTunesも、歳末の道路工事のようにやる必要のない改悪を続けるせいで、どんどん利便性が悪くなってきています。 けれども、ビッグテックにでもなってしまえば競合他社は簡単に捻り潰せるか買収できてしまうので、後はユーザーにサービスの代替を許さなければシェアを確保できてしまいます。 アメリカとEUがIT面で仲が悪いのも、ビッグテックがEU圏内のIT企業を軒並み駆逐してしまうからです。 日本にITが育たないのは別の理由があるのですが、日本のITはシリコンバレーの背中を見ているために追従しかできない体質でもあるのです。 従って、現在のインターネットはほぼアメリカという国家の独壇場であり、それに対抗して中国は自国の通信網を完全に遮断していますが、やっていることはシリコンバレーと同じです。 インターネットは、もはやフロンティアではなくビッグテックの「帝国」の支配下にあります。 私たちは米国製のOSによってWEBに接続し、米国製の検索システムを使い、米国有利のデジタル環境を甘んじて受け入れています。 日本は毎年莫大なデジタル赤字を抱えていますが、誰も問題にしようとはしません。 私たち日本人は、IT革命を経験する際に「無料の便利さ」を堪能しました。 しかし、コストが低くリスクも小さくビジネスチャンスが大きいからと群がったのは良いものの、今では営業するにも作業するにも調べるにも交流するにも広告するにもアメリカのテック企業のサービスに依存せざるを得ません。 大抵の日本人はそれで困らないのでしょうが、これらのテック企業の行いを果たしてどこまで看過できるのでしょうか。 少し前に、SNSのBlueskyで画像処理ソフトを提供する Adobeがアカウントを創設した時、なぜかそのまま炎上するという騒ぎになったそうです。 Adobeは画像生成AIをサービスに組み込んだ分、サブスクを高額化したために、長年支持してきたユーザーからの顰蹙を買っています。 イラストレーターとしてやってきた私からすると「まさかあのAdobeが」という印象です。 クリエイターのためのツールを提供して手堅い実績を積んできた企業が、クリエイターの著作物を一方的に学習して出力するだけの機能のために、クリエイターに経済的圧力をかけるなど想像もできませんでした。 今のデジタル環境に詳しい方なら眉唾には思われないでしょうが、MicrosoftもGoogleもAppleもMetaもいつまでユーザーフレンドリーな環境を維持するかは不透明な状況です。 Adobeの手のひら返しのように、業界標準を作っているような企業にやられると手も足も出せません。 すでにGoogle検索はスポンサードのサイトが上位に張り付き、アフィリエイト率の高いサイトが優先的に表示され、ヒット数の少ない個人サイトは殆ど引っかかりません。 余談ですが、本ブログのようなブログサービスが検索に乗るためには最低3か月、通常半年は更新を続けなければなりません。 けれど検索にスポンサードを払って検索上位に張り付いているサイトは、そんな地味な努力をしません。 ゆえに、生きた情報を更新し続けるようなブログは、現在のインターネットにおいては隅に追いやられています。 徐々に、「インターネット」は死に体になりつつあるのです。 今では生成AIで作られたコンテンツが氾濫し、個人の生の仕事は埋もれる傾向にあります。 人々は殆ど自分の使うSNSのタイムラインしか見なくなり、WEB検索機能に関しては冒頭にお話した通りで、そのアルゴリズムも寡占企業のブラックボックスにあります。 おそらく、新しいWEBメディアが誕生するくらいでしか開拓できる要素は残されていません。 そして生成AIによる偽サイトやディープフェイク、身元不明のコンテンツの氾濫によって正しい情報へのアクセスが困難になりつつあります。 上記リンクの記事では、Googleが「WEB全体のトラフィックは増えている」と言っていますが、正確性の高い良質なサイトへの物理アクセスが減少していることが問題なのです。 私は近い将来、ビッグテックの悪政に耐えうる者だけがインターネットを使う時代が来るのではないかと懸念しており、デジタルから離れる流れも起きてくるのではないかと感じます。 私はこれから事業を進めていく中で、デジタルの世界にどれほど可能性があるかについては懐疑的です。 しかし実地のビジネスの世界こそ飽和しきっている上に押し寄せる不況の波、どう打って出るか悩ましい部分があります。 デジタルはコストが低いからこそ進出しやすいけれど進める道が限られている中、それでも毒を皿まで食うのか、毒を食らわず草を食うのか、究極の選択が迫られています。 私が自分で作品を作らなくても無料で見られる作品は山ほどありますし、それこそイラストなどは生成AIでタグ打ちすれば好みのものが出力されます。 この「何をやっても無駄」感のある状況の中で、自分がしたい生き方を叶えるには、多少不利だとわかっていても進まなければなりません。 世の中を見ればわかるように、改めて群がるような需要はあまりなく、モノやサービスが飽和しているからこそ、「需要のために働く」のではなく「お金を稼ぐために働く」という目的にすり替わっている部分もあります。 世が差し迫ってくると、お金を稼ぐのも困難になるためできるだけ労せずに利益にあり着こうとし始めます。 そうして公的資金や公共事業、有力企業の傘下に入ってお零れに預かることが一種のハックとなっていきます。 経済は右肩下がりになっていくのに、企業業績を維持するためには無理に利益を作らなければいけません。 高齢の従業員がどんどん離脱していく中で若者はなかなか入ってこないために、わざわざ外国人を呼び込んで今のやり方を続けているのが日本企業です。 儲からなければ畳むしかないのが資本主義の世界なのですが、そうすると暮らしていけなくなるから需要を創出し続けなければなりません。 「走るために走らなければいけない」状況にありながら、それにも限界があります。 私の漫画やイラストを稼業にしたい思惑だって、需要があるからやっているわけではなく、供給を成り立たせるために消費者を探しているのです。 この歪な取引関係の中で、敢えて打って出ていくのも自分の我儘であることは承知していますが、理想を叶えるためには無謀でもやっていかねばなりません。 だから、これまでの「当たり前」の方法を取っていけば、確実に浮上するのは不可能でしょう。 それゆえ、着想のレベルから斬新でなければならず、手段も特殊でなければなりません。 プラットフォームに最適化された立ち回りをこなせる自信がないなら、既存の方法でやるのは難しいと考えて良いと思います。 どうやって行けば良いのか悩むこともありますし、時に「もっと世の中が壊れてくれた方が動きやすい」と思うのは本音なのですが、世の不幸を待っているのは不健全です。 とは言え、おそらく私の予想通りになっていくでしょう。 新しい何かを始める時というのは、既存のものを壊して無理に進まなくてはならない、というイメージがあります。 しかし、草の根も生えないほどビッチリと塗り固められた土壌で、個人が壊せる範囲は微々たるものです。 ただ、これから起こるのは巨大構築物の自壊であり、待っていれば自然に崩れていくはずです。 私はその合間を縫って進めば良いだけで、自ら巨大な壁を打ち壊して進む必要はありません。 その知恵を働かせた方が、身体を張るより何倍も上手くいくでしょう。 私はデジタル環境に慣れきっていますし、MicrosoftのSurfaceを使って制作しているので、正直言ってデジタルの世界がおかしくなっていくのは心苦しいのです。 けれどアメリカという国家が信用を失う日は近く、同国の中枢にある企業体がいつまで行儀良くしているかについて、私には不信感しかありません。 だからこそニュートラルにものを考え、臨機応変にことに当たっていくつもりです。 そのやり方は自分で考えなければいけませんし、上手くいく保証は皆無です。 けれども、そこから挑んでいかなければ道が開けないことを覚悟しています。 PR