招神万来

弥栄の時代をつくる神様と人のためのブログ

アメリカが崩壊する理由

楽太郎です。

今月1日、アメリカの7月期雇用統計が発表され、弱含みの結果だった上に3ヶ月通しての約26万人の下方修正が加わり、米国債市場で2年短期債が急伸しました。

米雇用統計で債権相場に転機-Bloomberg

少し解説をすると、国債は最長30年までの利回りを保証する融資を募るものですが、国家が発行するものゆえに信頼性が高く、ゆえに「リスクオフ資産」と呼ばれます。
対して株式は企業が発行するものなので、倒産や損失があれば値減りするものであり、利回りが高い分リスクは高いため「リスクオン資産」と呼ばれます。

米雇用統計の悪材料は投資家のリスクを嫌う傾向が反映し、その日は株式の全面安になる一方、国債のリスクオフを後押しして2年短期債が大量に買われました。
国債も需要と供給の関係にあるので、短期債が大量に買われたことで利回りは25bp(0.25%)下落しました。
本文にある「スティープ化」とは、短期債の利回りは下がった一方、長期債の利回りは依然高い状態となります。
通常、スティープ化が起こる主な原因は「景気回復期待」と「インフレ期待」があり、今回は雇用統計悪化を受けて反動だったため、明らかに「インフレ期待=物価高の加速」を懸念しての動きだったことになります。

このニュース記事一本で突っ込み所満載と言っては何ですが、そもそも「米雇用統計」は算出方法に関して、兼業(掛け持ち)労働者の採用を新規としてカウントし、就労努力を行わない失業者をカウントしていないと言われています。
つまり、これだけでも統計としての信頼性は低いのに、毎回発表後には「下方修正」なるデータの訂正が行われ、公的発表と考えるにはあまりに杜撰な出来である反面、投資市場はこのデータを元に先行きを決めるため、リアルタイムで採用する意義すら疑うレベルなのです。

ゆえに、アメリカ経済は改竄されたデータ以上に悲惨な実態である可能性が高く、それでも好調な株式市場はかなり「浮足立っている」気配すらあります。
この発表を受けたトランプ大統領はブチ切れ、労働統計局のマッケンターファー局長を即座に解任しました。
ただ、BLSの統計の修正は常習犯であり、今始まったことではありません。
トランプ大統領の怒りは統計値が悪かったことの言いがかりのような気がしますが、仮にそうであるとしたら即座に統計局の責任者がクビになるなどどこの共産国家か、と思います。

現在、トランプ大統領がFRB(連邦準備制度)のパウエル議長に「利下げしろ」と圧力をかけていますが、そもそも国債の利回りが高いということは国債価格が低いためで、なぜ国債価格が下がり続けているかというと、アメリカの国家としての将来性が危ぶまれているからです。
今年9兆ドル近い債務を償還しなければならない上、トランプ大統領が世界中に「相互関税」と称し、アメリカから高圧的に言い値で関税をかける一方、輸出国側はアメリカに関税を課すと許さんというジャイアンも驚く態度で関税交渉を行っているため、「不確実性が高い」と世界中の投資家たちに思われています。

そのため、米国債市場はリスクが高い長期債の利回りは高くなる一方、米国政府が万が一「債権を踏み倒す」懸念から投資が抑制され、国債価格は下がり続けています。
国債のスティープ化は、長期債が値上がりするので債権市場にとっては健全化が加速することを意味しますが、去年8月まで米国債は2年以上「逆イールド」の状態でした。

本来、融資の貸し手、債権の買い手側からすれば債権を何十年も保有するのは、それだけ待てば高い利子を得られるからです。
一方、融資の受け手、債権の売り手側は長期に渡って利子の保証をしなければならないことになり、長期の見通しと返済努力が必要になります。
「順イールド」というのは、債権を購入すれば待っただけ高い利子を貰えるという金融的取引としては当たり前のことなのですが、短期の間に債権を持っていた方が利回りが高くなるのが「逆イールド」です。

即ち逆イールドは長期債よりも短期債の利回りの方が高くなってしまう現象なのですが、実は最近までは逆イールドの状態の方がアメリカ政府にとっては好条件だったのです。
なぜならアメリカは2020年のコロナショック以降、総債務額が13兆ドルに達しており、長期債の利払い総額は比例して高くなるからです。
しかし2024年8月を以て国債レートが順イールドになったため、今年7兆ドルの償還期限を迎えるアメリカ政府にとっては泣きっ面に蜂なのです。

2022年7月から2024年の8月までの「780日間」が逆イールドの状態でしたが、実は経済学の世界では逆イールドから順イールドとなった数年後に「大暴落」が起こるという定石があります。
1928年から始まった約700日間の逆イールドの後、世界恐慌に至る米国大不況が始まりました。

1974年からの約500日は「長期スタグフレーション」の時代の始まりであり、1998年からの約300日は「ドットコムバブル崩壊」、2006年からの約550日は「国際金融危機」に繋がります。
これらは逆イールドの規模というより、「期間の長さ」がその後の経済崩壊に影響するというデータがあります。
このジンクスに従えば、2022年からの約800日は過去最長であり、もし定石通りなら経済にもたらす悪影響は過去最大レベルです。

なぜ逆イールドから順イールドに転換した後に経済崩壊が起こるかについて、今のところ確固たる学説はないようです。
おそらく、逆イールド時の債権の売り手は短期債のやり繰りは何とかできても小規模で資本的体力のない企業が多いため、長期債の利払い時に高利回りだと負担額も多くなり、そのまま債務不履行になってしまうのではないでしょうか。
経済理論に従えば、アメリカ経済は法則通りに崩壊の憂き目に遭うのは避けられないように思えますが、ここからは更に深掘りしてみます。

現在、トランプ大統領は経済音痴なりに国債価格が低いのは問題だと認識しているようですが、法則的に考えればアメリカが多額の財政赤字を軽減するためには、国債が高くなれば支払う利回りも低く抑えられます。
だから7兆ドルという債務返済を何とかやり繰りするために、FRBのパウエル議長に「利下げをしろ=国債価格を上げろ」と叱責しているのだと思います。
しかし、そもそも国債価格が下がり続けるのはアメリカの国家的信用がガタ落ちしているからであり、トランプ大統領がアメリカ経済を立て直すために粘れば粘るほど国際的評価は下がり、国債価格もそれに連動してしまいます。

これまでは、米国債価格は下がっても外国の投資家は米国株に逃げ込めたのです。
少なくとも「解放の日」の4月までの時点では、国債が下がっても株式に、株式が下がったら国債にと逃げ道があったのは、基軸通貨としての米ドル指数がバランサーの役割を果たしていたからです。
大抵の外国人投資家は自国通貨や対ドルで安価な通貨で米ドルを借りる、いわゆる「キャリートレード」を使って米国債や米国株に当てていました。
しかし、今はアメリカの信用不安が広がるせいでドルは下落基調にあり、投資家がただでさえ米国債を保有していても配当率はマイナスなのに、それに輪をかけてドルまで値下がりしたら二重の損失になってしまいます。

よく経済学を勉強している投資家は、アメリカに教科書通りの「資本逃避」が起きていることを知っています。
そして「ドル」を基軸通貨とする不安は「金」のレートを押し上げ、それに比例してドルは下落基調にあります。
だから投資家たちは隙あらば手仕舞いしたいでしょうが、とりあえずまだ米国株はバブル景気なので株式一本に賭けている状況です。

しかし、この米国株も実に怪しい代物でS&P500の時価総額の50%以上がMicrosoft、AppleやNVIDIAなどのマグニフィセント7が担っています。
現在は「AIブーム」の真っ最中ですが、あれほど喧伝した生成AIは全世界で権利問題を発生させ、裁判所ですら持て余すほどの法的闘争が起きていながら、時代の申し子たるOpenAIは営利企業への転換も図れないほどの大赤字企業です。

その望みの綱である「AGI」は未だ理論的に実証されておらず、AI研究者の7割以上が「生成AIの開発フレームでは実現しない」と回答しています。
つまり、生成AIはいくら無尽蔵に開発費を使ったとしても、AGIに化けるのはポケモンのピッピがハピナスになるくらい無理筋の話なのです。

その上、AIブームでほぼ一人勝ちの様相を呈しているNVIDIAは、取引成立した瞬間に利益として計上するくらいガバガバの会計処理をしていながら、粉飾決算や取引企業との循環取引を行っている疑惑が常に付き纏っています。
そもそも、NVIDIAの得意先の企業はキャッシュフローが伸び悩んでいる割に営業キャッシュは大幅に上昇しており、各企業はそれをデータセンター建設に関わる設備投資だと述べていますが、実際にビッグテックの営業利益を見るとほぼ生成AIに係る収益は見られず、既存のクラウド事業や広告収入、Eコマース事業だったりします。

つまり、AIブームは投資を呼び込む最高の花形ではあるものの、実際に内容が伴う部分は一つもないのが現状です。
その実態は大したホワイトカラーの削減にも至らず、たかだか著作権や人権を素通りして出力するだけのアプリであり、革命的技術であるAGIには全く繋がらないばかりか「まだAI革命は始まったばかりだ」と言い続けなければ赤字の言い訳もできないような泡沫産業に過ぎません。

まあ、生成AIに関しては濃密な記事が10本くらい書けるのですが、とりあえずここまでにしておきます。

しかし、特に成長産業もなく工業もサービスも伸び代のないアメリカにとって、国際的にイニシアティブを取れるのはデジタル産業と軍需と製薬くらいです。
そして、アメリカという国は1947年の「ロビイング規制法」以来、逆に政治家への贈収賄が合法化され、大企業になるほどR&D投資で新技術を開発するよりも政治家に賄賂を渡して制度を企業に有利になるように変えさせた方が手堅いため、資本力が高ければ高いほどシェアの維持が強権的になるのです。

古くは自動車産業、金融業、製薬産業、今ではデジタル通信産業が当て嵌まります。
新興企業の斬新なサービスは有力寡占企業が敢えて潰しにかかるか、早いうちに買収して自社サービスに組み込むことで、自社のシェアは脅威に晒されず容易に権勢を維持できるわけです。
ゆえに、赤字財政が跳ね上がり債務の償還すら覚束ないアメリカ政府が外国から投資を募るためには、嘘をついてでも株式を盛り上げなければならず、それを担うマグニフィセント7にとって「AI」というのは過去の成功体験を匂わせる、夢の投資先には売ってつけの金融商品だったのです。

ただ米国株を代表するS&P500の絶好調にもカラクリがあって、FRBがマネーサプライを過剰供給して株価指数を右肩上がりに見せかけ、実は全体的な貨幣供給量は戦後ずっと頭打ちなのです。
また、企業の大量自社株買いによる相場操縦、ETF(上場投資信託)やオプション取引を使った評価額の水増しによって、いかにも飛ぶ鳥を落とすように見えるように粉飾されています。
第一、企業のCEOが大量に自社株を保有することは決算や業績見通しや新製品発表を自ら知っていながら売り抜いたり買い越したりできるのは、どう見てもインサイダーを免れないものであり、売却益が公然と発表されるのもおかしな話です。
また、トランプ大統領が関税に関してSNSで仄めかすたびに株式市場は動くので、まるで一国の宰相がインサイダーをしているようなものです。

アメリカ株式市場の時価総額に貢献する企業には更に問題があります。
軍事用生成AIを開発するパランティアは現在、世界の時価総額上昇率で群を抜いている企業ですが、この企業の開発するアプリはイスラエル軍がパレスチナやイランなどの敵対国家の要人を暗殺するための用途に用いられ、同社はAmazonとGoogleが提携しています。
つまりイスラエルのガザ侵攻や近隣の中東諸国に仕掛けている戦争の裏で、アメリカのテック企業が参画しており、言ってみれば戦争犯罪に加担しているも同様です。
大手メディアではイスラエル軍の凄惨極まるパレスチナ一般市民への虐殺は報じられませんが、仮にイスラエルという国家の威信が失墜すれば、現在進行中の戦争犯罪が炙り出されることでしょう。

そしてイスラエルが戦争に使う兵器のほとんどは、アメリカ国防省がほぼ無償で供与しています。
トランプが大見栄を切った来年度の予算案は、社会保障費が大幅にカットされた割には国防費は増額になっており、どうやらイスラエル系と軍需産業のロビイストが結託して動いているようです。
これにアメリカ国民はもっと怒るべきだと思うのですが、現在のアメリカは日本以上に弱肉強食の世界なので、道理も民主主義も通用しないのでしょう。

こうして国家的に戦争犯罪に加担する一方、イスラエルには戦闘機を丸ごと横流ししても、ロシアの侵攻を受けているウクライナにはミサイル一発出し惜しむのがアメリカという国です。
このあからさまな態度は、全世界から冷ややかな眼差しで見られているのをトランプ大統領は気づいているのでしょうか。

上記のように、米国債の信用低下とドルの下落基調には密接な関係があり、マグニフィセント7が牽引する半導体デジタル産業だけが唯一外貨を呼び込む手段になっています。
国際的評価を下げないようにするためには、米国経済に見通しがあるように見せたいため、雇用統計すら帳尻を合わせている可能性が高いのです。
それでも米国経済の復活のために関税を敷いて製造業を国内に呼び戻そうにも、労働単価を発展途上国並みに下げなければ国際競争力で敗北する可能性があり、労働者の総収入が下がれば不況はさらに加速するでしょう。

その上、トランプ大統領が世界に対して喧嘩腰で押しつける関税も各国が米国製品の代替を行えば済む話であり、米国に輸出しなくても他国で利益が出るならばアメリカ以外の国と取引すれば良いだけで、結果的に国内輸入品の値上がりの割を食うのは米国民です。
輸入品に需要があるのは、国内生産では同じレベルのものが作れないからであり、業界的には国内生産にするより安上がりだから輸入を行うのです。
ゆえに、輸入品が高額になれば庶民はますます物価高に悩まされることになり、景気後退が深刻になり輸入品が真っ先に買い控えられたとしたら、関税収入も相関的に下がります。
その悪循環は米国経済にいずれトドメを刺すことになり、また債務額に対する関税収入で得られる資本の比率は微々たるもので、関税で財政赤字を補填するなど夢物語なのです。

経済浮上の成果が出なけば全世界から総スカンを食らうだけであり、国際的な信用の低下は国債安・ドル安・株安のトリプル安に向かっていくことでしょう。
つまり、どういう手を打ってもアメリカ経済は景気後退の局面を避けられず、国内情勢の危機的な状況はさらに危険な情勢に至る可能性が高いのです。

最後に、今週にアメリカ政府が新規国債、1250億ドルを発行するというニュースをご紹介します。

米国債を待ち受ける1250億ドル大規模入札

上記でも解説したように、米国債も需要と供給の経済原理に漏れることはないため、国債を大量発行すれば国債は安くなり、利回りは高くなります。
これはトランプ大統領がFRBを脅して政策金利を操作しまくったとしても、決して思い通りにはならないでしょう。
これだけ大量の国債を発行するということは借金をするのと同じですから、いつかは利息を払わなければいけなくなります。

アメリカ政府が今年支払う債務は約7兆ドルですが、来年には6兆ドル、再来年は4兆ドルです。
今でも自転車操業のような国家運営なのに、毎年膨れ上がる財政赤字を加味してもこの状態が続くとは思えません。
トランプ大統領の経済政策の肝である予算の削減は絵に描いた餅で終わりましたし、大幅減税策は国家の税収には結びつかないため財政赤字に寄与はしても景気浮上に貢献するかはわかりません。

どうもトランプ大統領は本気で狂っている演技をして、確信犯的にアメリカ経済を沈没させようと努力しているのではないか、と思える瞬間すらあります。
実際はどうであれ、トランプ大統領が頑張れば頑張るほど確実にアメリカ経済を袋小路に追い込んで行ってしまうのです。

心配なのは、「合衆国第51番目の州」である日本です。
日本は米国債を15%近く保有しており、その総額は1兆800億ドルとされています。
このままでは米国債の大暴落に巻き込まれるのは目に見えており、しかもアメリカの経済崩壊の尻拭いは日銀の悪意ある円安政策でジリ貧になった日本国民が肩代わりすることになるでしょう。

日本円の国際的な実質価格は対ドル70円前後と言われており、政府と日銀はこれを半値にする努力を30年以上続けてきました。
円安傾向は国内の金融業界と輸出系企業を優遇し、一般国民は慢性化するデフレとグローバル化に伴う外資の流入によって年々貧しくなっていきました。
しかし、売却した米国債を円に変えて円高に転嫁させれば、日本の一般国民はあるべき生活水準に戻ることができるのです。

しかし、このままではアメリカと無意味に心中する可能性が極めて高く、それはさすがにごめん被ります。
日本は今まさに率先して米国債を売り払うべきであり、戦後80年の間に我が国が受けた負のカルマを、その一手だけで米国に返済させることができるのです。
アメリカという欺瞞と謀略に満ちた国家と手を切ることができるならば、日本は憲法レベルから見直す機会を得られるでしょう。

是非とも「ベルリンの壁」をたった一人で崩壊させた東ドイツのシャボフスキーのようなうっかりさんが、奇跡を起こして日本の救世主になってくれないかなと思ったりもします。

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